生の高座

長いコロナ禍で世の中が変わって行きつつある。
全く見慣れなかった動画の配信も、皆さん結構ご覧になるようになった。
ネットには音源や画像があふれていて、まだまだ感染リスクのある中を、わざわざ出掛けて寄席や落語会へ足を運ばなくても、好きな時に好きな番組を見れるようになった。
それに対応すればいいのだが、あえてしないのは、落語は生で、見て、聞いて、笑っていただく芸だと言うこだわりがあるから。
ネットでは見れない、聞けない、いい落語をする時もあれば、どうしようもない落語をする時もある。
その一期一会が楽しいと思っていただきたい。
一つ一つの高座に、その日できる最善のコンディションで、最高のポテンシャルで臨むのが噺家だと思っているから。
食事の席で落語をする時もある。
出入りの激しい場所で落語をする時もある。
若い頃は、演りにくい時は途中で手を抜いた事もあった。
時間だけこなして高座を降りた事もあった。
こんな時代だからこそ、足を運んでいただいたお客様には楽しんで帰っていただこうと努めている。
3年半ぶりに鳥取道の【道の駅かわはら】で落語をした。
サービスエリアの施設の中での落語。
人の動きもある、トイレや買い物で立ち寄った人を足止めするほどの有名人でもない。
施設側のスタッフは「きちんとした場所で落語をしていただいた方が演りやすいだろう」とおっしゃるが、ここではこれがアトラクションなのだ。
こんな事もやってるという、賑わいの一つになればいいのだ。
でも、手を抜かない。
すると…前に用意された客席から、公演中はほとんど席を立つ方がいなかった。
むしろ集まった。
コレが生の高座なのだ。
だからやめられない。
よくお声をかけて下さいました。
次回は、歌ネタ演ろうかな。
このままコロナが終息して、以前のように毎年恒例になるよう祈ってます。